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西澤保彦「人格転移の殺人」をネタにしてルールドミステリの話

人格転移の殺人 (講談社文庫)人格転移の殺人 (講談社文庫)
(2000/02)
西澤 保彦

商品詳細を見る

世の中にはルールド・ミステリ、というものがあります。
いや、この呼び名はあまり有名ではなく、かなりマイナーな、それこそある書評を読んだ人にしか伝わらないような呼び名ではありますが、この「人格転移の殺人」を一言で表現するならこれ以上の言葉はきっとありますまい、と、俺はそう思います。 このルールドミステリという言葉が一体いかなるものか、という疑問については、その発案者であるフジモリ氏のHPをご覧になるのが一番かと。

フジモリの脳内ラビリンス 書評 西澤保彦「転・送・密・室」
http://www.sancya.com/book/book/special_49.htm

注意:書評後部にタイトル書籍(転・送・密・室)のネタばれっぽいものがあります。ぽいもの、というのは俺自身が同作を読んでいないためわからないからです。作品紹介の後しばらくルールドミステリについての談義が続くので、そこだけでも。


この世にミステリは星の数ほどあり、それらは大抵、一言で言い表すことができます。本格、新本格、社会派、探偵、ハードボイルド、バカ、ホラー、サイコなどなど。ミステリ以外の要素が加わる作品なら、後ろのほうの単語がついたりします。

さて、ミステリの分類にはもうひとつ種類があって、
密室、電車、館、学園、叙述、などなど。つまり舞台や主眼となるアイテムに焦点をあてたものですね。

この「人格転移の殺人」は、上段カテゴリでいえばSFミステリ。
そして下段カテゴリでいえば、何を隠そうルールドミステリ、と呼べると思います。


ルールドミステリとは一体何ぞや。それに、上段カテゴリに含まれないのはなぜ。
ではルールドミステリの定義と行きましょう。乱暴に言えば「ルール付けされたミステリ」のことです。当たり前すぎて逆に意味わからんですね。ちょっと詳しく言えば「一定ルールの下に論理的展開を行い、事象に説明をつけるミステリ」のことです。わかります?
フジモリ氏はそれに「ルール自体が事態の核心である」と加えていますが、それはルールを定めた時点で自然とならざるを得ない(でないとルール付けする意味がない)ので割愛してもいいのでは、と。あまり詳しすぎると叙述みたいに、カテゴリ名でネタばれする羽目になってしまいます(笑)。

この作品を具体例に挙げますと(事件の核心に迫るネタばれは控えるつもりです)、
・ある部屋に入った二人以上の人間は互いの人格が入れ替わる。
というルールがこの作品のキモになるわけです。もちろん、この条件は覆りません。我々読者が「なんで?」と問うても、「そうなるんだから仕方がない」という答えしか返ってきません。もしくは「詳しくはわからない」

ルールは他にもあります。
・三人以上の人間が同時に入ると、彼らを円周上の点とみなして、隣の人物に人格がスライドする。
二人の場合でも起こっていることは同じです。

・人格のスライドは一度ではなく、何度でも起こる。(この現象をマスカレードと呼ぶ)
・マスカレードはいつ起こるか全くわからない。
・マスカレードは肉体同士がどれだけ離れていても起こる。
・肉体が死亡した時は、その時中に入っていた人格が消滅する。
・次にうつるべき肉体が死んでいた場合は、飛び石の要領でスライドする。

とまぁ、こういったルールがベラベラ並びたてられます。もちろん、このまま肉体と精神の違いに四苦八苦、互いに励ましあい努力していく様を想像するのも興味深いものではありますが、これはミステリなものですから、そしてミステリの中でも殺人ものなわけですから、当然殺人が起こります。

問題は、この作品を楽しむにあたって「だからどうして人格が変わるんだよ! 本当は変わってないんじゃねぇの?」といった思考法は厳禁です。確かに我ら読者は、浪漫探偵がいうところの「全てを疑いうる特権的種族」なのですが、それではこの作品は面白くない。
前提としてのルールは受け入れ、その上で戦う必要があるわけです。いや、必要というと縛られている感じがしていけません。決してカテゴライズする上で強制性を持たせてはならないのですから。ですからここは「この作品を楽しむためには、ルールを踏まえた上で推理するといいんじゃないでしょうか」くらいで。

本作品はやはりミステリなので、最後の真相にたどりつくヒントはすべて作中に散らばっております。何度か見返したので間違いないはずです(なにせ、いちど十角館で「推理不可能」という荒業を見せつけられてしまったので)。すなわち、我々が作者の提示する土俵に立って、ルールを順守している限り謎は完璧に解けます(最大の謎、人格入れ替えについては、解説で森博嗣氏もおっしゃっているように、物語の最後に至っても決してまったくこれっぽっちも解かれないのです。これは繰り返し強調する必要があります。なにせ人格入れ替えが行われるという前提において、(現在の)中の人格、肉体、殺人犯、方法、動機、などなどを推理するのが醍醐味でありますから。そこに疑問を持つのは、作中で提示される時刻表を疑うようなものです)

まぁ、そういうわけで、この西澤保彦氏の書籍はこういったトンデモ科学溢れた作品が多いので、破天荒な世界を楽しみたい方は是非どうぞ。ちなみに俺は一時期、「インシテミル」で一世を風靡した米澤穂信氏と本著者を混同していたため、友人と話がかみ合わなくて四苦八苦していたことがありました。関係ない? ああそう。


それでルールドミステリなんですが、もちろんこの西澤氏のシリーズのみなら、こんなカテゴリ名を付ける必要はないわけで。もちろん、そのほかルールドミステリと呼びうる作品はいくつかあります。
実を言えば俺がたびたび引用する「浪漫探偵」こそが初めて出会ったルールドと呼びうる作品で、いまでも一番好きな書籍であると断言できるのですが、ライトノベルということもありなかなかミステリ好きの人には勧めにくい。そしてえてして、ミステリ好きの人は「ファンタジーですよね?」とおっしゃる。編集者のように。

この中の大半は上記リンクサイトでも挙げられております。
新城カズマ「浪漫探偵朱月宵三郎 屍天使学院は水没せり」(おそらく絶版。古本屋にもなかなかないかもしれません)
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都合により二作目の写真で。

かつては確かに実在した、ミステリの中に封印されていた探偵と怪人たちが現代によみがえった! 目の前では絶対に人の命が果てることがない怪盗「夕闇男爵」を始めとし、どんな公的文書でも正確無比に捏造する書記官、一晩でどんな建築物も建ててしまう大工、闇の中にあるものならばなんでも取り出すことのできる男など、一癖も二癖もある奇想天外な連中と、彼らの前に立ちはだかる探偵朱月宵三郎の知的バトル……と思いきや、決して人を殺さないはずの夕闇男爵がついに殺人? はたして夕闇男爵は人を殺せるのか? もしくはなにか別の真相が? 図らずも探偵に守られる羽目になった深草真夜は、いったい誰を信じるべきか!?

城平京「名探偵に薔薇を」
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城平京といえば思いつく漫画ファンもいると思いますが、ガンガンでかつて連載していた「スパイラル ~推理の絆~」の原作者です。同作ノベライズも行っており、これまたミステリとして出色の作品群。読者を馬鹿にしたような「毒クラゲ二重奏殺人事件」は是非(笑)
この「名探偵に薔薇を」には一つの毒薬が出てきます。その名も小人地獄。適正な量を用いれば無味無臭でごく少量で致命傷を与える最強の毒薬。しかし少しでも多ければ強烈に苦味を発し、とても飲めたものじゃないという欠点も持つ。ある時この「小人地獄」を使って殺人が起きた! 死んだのは女性、だがこの事件には不審な点がいくつかある。仕込まれていたと思われる飲み物には、致死量をはるかに超えた小人地獄があったのだ! これでは飲み込む前に気づくはず。なぜ彼女は小人地獄にやられてしまったのか。これが自殺でなければ、犯人はなぜこのような最悪の使い方をしたのだろうか。もちろん、適正量を知っているはずなのに!


久住四季「トリックスターズ」
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魔法が当たり前のように存在する世界。ある特殊な学校に入学した主人公は、その教師である偉大な魔法使いと、もう一人の魔法使いが「対決」する現場に巻き込まれてしまう。その途中に起こるロマンスと密室殺人。魔法では再現不可能!? ではいったいどうやって殺したのだ。最後に明かされるおそらく最大の謎(笑)に騙されなかった読者はいないはず(反則だけど)


と、まだ作品はいくつかあるのですが、いっとうわかりやすい三作ってたぶんこれだよな、と思いながら紹介してみました。
こうやって挙げればわかると思うんですけど、ルールドミステリってのは決してSFだけじゃないんですね。浪漫探偵は伝奇的な要素を含んでるし、名探偵に~はこのなかでは幾分現実に即したものになっていますし、トリックスターズは学園ファンタジーですから。ルールドミステリは「ミステリの作法の一つ」そう考えてもらうのが一番かと思います。あくまで現実的なルールとは異なったルール上で謎解き合戦。パズラーにも通じるものがあると思いませんか?

蛇足
ミステリの分類にはまだあって、いわゆる「フーダニッド(誰が)」「ハウダニッド(如何にして)」「ホワイダニッド(何故)」といったようなものがあります。
個人的な感想でいえば、ルールドミステリには「ホワイダニッド」が多いように感じます。たとえば名探偵に薔薇を、では、最強の毒薬を最低の使用法で、という謎が常に付きまといます。なぜ、犯人は(いるとすれば)このような頭の悪い使い方を? といった。
機械トリックやアリバイトリックとはあまり縁が無いこのルールドミステリ群。おそらく最初に叙述トリックを読んだ時のような、新鮮な驚きを与えてくれるはずですよ。
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