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有限無限パラドクス「3」

7.名探偵集結?
「資料、無いよ」
「だな」
「どういうこと?」
「さあな」
「さっぱりだ」
「俺にもな」
「どうすんのさ」
「待つしかないだろ」
「そりゃ負けだよ」
「じゃ、頑張ってくれ」
「何を」
「情報収集」
「面倒くさい」
「じゃ無理だ」
 疲れた。僕はベッドに寝転がると、頭を休めようと努力した。休めようと努力だなんて矛盾しているようだが、その甲斐あって、しばらくの後、僕は深い眠りへと落ちていった。
 ……
 いきなりのベル音で、僕は跳ね起きた。時間。午前九時。朝だ。三日目だ。それよりなんだこの音。なんだかよくわからないが映画で聞いたことあるような……
 やっぱり起きていたのか、竜兄が椅子から転げ落ちていた。どうやらベル音に驚いたようだ。しかし彼は落ち着いた風で立ち上がると、いろんな所をあけて、発生源の突き止めようとしている。僕も加勢するよ、そう言おうとしたとき、彼は棚から黒い何かを取り出した。
「……なに、それ」
「電話」
「は?」
「お前は知らないかも知れないな。こいつは電話の凄い古い形式のヤツで、俗に黒電話と呼ばれる」
「くろ、でんわ」
 竜兄はためらわずに受話器を取った。
「とにかく、電話だ。もしもし……うん? 誰だって? ……お前も? そっちも?
へぇ、いつの? 16歳、ええと、ああ、あのときか。うん、まだ事件は起きてないだろうが、あのときだ……あ? いや、それはない。うん。初めてだ。するとなんだ、一緒にいるのはもしかして桜? ……お、桜、久しぶり。うん、やっぱ若いな、声。こっちのはもう……いや、13年後のお楽しみってとこだよ。うん……あー、そうか。何人? うん、わかった。こっちには鯨司。13年だから、そっち10歳なら、こっちは23だよ」
 竜兄は僕に受話器を差し出した。話から察するに、あいては竜兄の奥さんの桜姉のようだけれど、なにか違和感のある会話内容だ。
「かわれって」
「桜姉?」
「そう」
 受話器を受け取る。
「もしもし、鯨司です」
「ええーっ!」
 耳をつんざくような嬌声。思わず受話器から耳を話す。
「嘘―! 渋い、渋いよゲッちゃん! あのかわいらしいゲッちゃん13年でこんなになっちゃうなんて! あれ? じゃ私より年上なのか。だとすると私にとっては初めましてで、ゲッちゃんにとっては久しぶりだね。えーと、そうかな? うん、初めまして、16歳の新山桜です!」
 はて。
 竜兄を見ると、なんだかよくわからないが、人をいらつかせることに特化したような嫌らしい笑みでこちらを見ている。
「ええと、桜姉」
「その声で桜姉なんて言わないでよ、もう」
 はて。
「おおい桜、鯨司には何も説明してないぜ」
 後ろから竜兄の声。受話器を通して届いたのか、桜姉が応える。
「え? そうなの? ということは、何も知らないってことだね! ええと、あのね。このホテル? 監獄? どっちでもいいけど、ここに連れてこられた竜君は一人じゃないの。一人じゃないって言い方も変かな。まぁいいや」
 肝心な部分をまあいいやで流す当たり、竜兄と桜姉は似たものどうしだ。
「区切りごとに、人生でいくつかのタイミングの竜君がみんなここにいるの」
 はて。
「そっちはゲッちゃんが弟子の時。こっちは私が《ワトソン》してるときの竜君。《ホームズとワトソン》あらゆるパターンそれぞれの竜君が、今まで私が電話した中で、最低五人いるわ」
「ええと、つまり、ええと?」
「《ワトソン》は、私と、サッちゃんと、ゲッちゃんと、誰もいないのと、レク」
「サッキ? え? レク? 猫の?」
「そう、レク」
「なんでレク?」
「知らない。21歳の竜君の《ワトソン》だから、そっちの竜君にきけばわかるんじゃない?」
 竜兄をみる。目が合うと、彼は肩をすくめた。
「知らん」
「知らないって」
「そう、まあいいけど。それで、こっちだと今ね、謎が一つあるわけよ」
「奴らがどうして必要のない調査をしているかどうか、だよね」
「そうそう! それがどこの竜君もみんな同じこと言っててさ! 面白いよね、これ。やっぱ同じ人なんだね。で、なんだっけ。その謎のこと。それだけはやっぱわからないんだよね。だからさ、竜君みんなで力を合わせたら解けるんじゃないかって。まぁこれ、私が部屋引っかき回して電話見付けて、最初の竜君にコンタクト取ったときに思いついたんだけどね。番号は部屋の番号でいいからさ。後で電話してみてよ。いまのとこ5番がそこの部屋で、一番から全部竜君がいるわ。6番は次に試してみる」
「うん、でもこっちの竜兄も、なにもわかんないって言ってるよ」
「そうなのよね。だからさ、せっかく種類が豊富なんだし、私たち《ワトソン》も考えてみようよってことで。サッちゃんとゲッちゃんと私。それとレクね。ホントは天峰さんもいると心強いんだけど、多分竜君が《ワトソン》の時のはずだから望みは薄いのよね。それが残念。まあ、そういうことで」
「わかった」
「じゃね、6番にかけてみるから。また後で」
「また後で」
 電話が切れる。
「若かったね」
「だろ。俺と結婚したとかいうとパラドックスが起きるからやめてくれよ」
 つまり、伝えた時点で結婚しなくなると、そう言いたいのだろうか。そんな微妙な関係でもなかっただろうに。
「13年前っていうと、アレの時だよね」
「アレの時だ。でもアレって殺人事件と言うよりは、歴史的大事件のはずだけどな」
「人死んだからじゃない? 一応」
 とりあえず簡単に説明すると、僕が10歳の時に起きた事件というのは、妖怪どもが侵略してきたときのことだ。以上。ツッコミは拒否。
「竜兄の人生で《ワトソン》がいた時期は? つーかなんでサッキが《ワトソン》なんだよ。知らないぞ、そんなの」
「俺も知らないよ。だから多分、これから先になんかあるんだろ」
「レクは?」
「さあ、あるならあの時しかないが……そもそもアレ、殺人事件じゃないしな。いや、起きてたのか、もしかすると? それとも以前関わった事件のうち、知らない間にレクが《ワトソン》になっていたかだな。少なくとも、今まで生きてきた中で《ワトソン》は桜とお前の二人だけだ。まだ俺には、《ホームズ》の時期よりも《ワトソン》の時期の方が長いから」
「ふうん。まぁ、後できけばいいか、サッキに」
「お前、それ嫉妬?」
「知るかよ」
「青いな青いな」
「うるせえ」
 僕は受話器を取って、1番にかけようとした。そこで手がはたと止まる。
 この電話、どうやってダイヤルするんだ?



 結局、竜兄が何も教えてくれなかったせいで、次に呼び鈴がなる翌日まで、ぼくは電話を放ったらかしにしておかなければならなかった。



8.ワトソン達の一日
「え? ああ、なんだ。それなら仕方ないね」
 桜さんは受話器の向こうで笑う。
「竜君、教えてくれなかったの?」
「調べろ、ってさ」
「確かに調べれば出てくるわね」
「俺が調べると思う?」
「さあ、少なくとも十歳の頃は、とても調べるようには見えないけれど」
「そう言うことだよ。で、竜兄は何人いたの?」
「七人」
 七人並んでいる竜兄を思い浮かべて、僕は思わず苦笑した。どこの侍だ。
「あとゲッちゃんがもう一人いたよ」
「何歳の?」
「27歳。そっちから数えて四年後。なんかあったの?」
「なにが」
「ずいぶん落ち込んでるみたいだったけど。それに、確かこの年、ゲッちゃん行方不明になってるよね」
 思わず体を震わせた。そうだ。今まで無視していたが、確かに僕は行方不明になる。御剣竜太郎が33歳の時。そう資料に書かれていた。
「きいても応えてくれないのよ」
「……うん」
「あ! ごめんね? そんな話するものじゃなかったね。うん。それでさ、ちょっと調べてみたんだけど、この調査に関わる資料、探してみた?」
 話を変えてくれたのはありがたかった。僕は、探したけど無かった、その旨を伝える。
「そうそう。そのことなんだけどさ、竜君に言った途端、急に考え込んじゃって、だからさ、やっぱり関係あるよね」
 そりゃ、竜兄が考え込むなら重大な手がかりに違いない。
「なんで残ってないんだろう? 調査はしているから、残ってなきゃおかしいわけだ。逆に言えば、資料が残ってないんだから、奴らが調査をした事実はない」
「そうね、うん、よくわからないけど。でもさ、今こうして調査はしている訳よね」
「じゃ、資料を残さなかったんだろう」
「どうして?」
「無駄だったからかな」
「つまり、私たちがここにいても、事件は起きたって、そういうことよね」
「そうさ」
「でもそれがわかっているのなら、なおさら調査する必要はないでしょう?」
「例えばさ、桜姉。結果としてに否定する資料が残っているならともかく、資料そのものが存在しないとすれば、何かの間違いだって思いたいだろ? 論理的にじゃなくて、感情的に」
「うーん」
「そんなもんさ」
「そうかな」
「ああ」
「でも、調査自体は無駄になるのよね」
「資料が存在しないからね」
「なんだかとっても意味のない時間を過ごしてる気分」
「だろうね」
 若い桜姉はため息を一回ついて、
「ああ、電話の仕方、わかったでしょう? サッちゃんにかけてあげなさいよ。2番の部屋だから」
「ああ、うん」
「私、もうちょっと調べてみる」
「了解」
 通話音が切れる。竜兄はようやく読書のレベルを下げたのか、昨日から紅茶を飲み出した。今も砂糖を入れて、小さなスプーンでかき混ぜているところだ。
「なんか面白いのあった?」
「そうだなぁ、宇宙人はいつまで経っても現れないくらいか」
「いないの、やっぱり」
 僕は2番をコールしながら訪ねてみる。
「だろうな」
 ガチャリと音がして、向こうが応えた。
「もしもし」
「サッキ?」
「……鯨司? あんた鯨司?」
「そう」
 途端、ものすごいがなり声。
「ちょっと鯨司! あんた何で急にいなくなってんのよ! 三年よ! 三年!」
「うるせえ。落ち着け、サッキ」
「サッキ! いつの呼び方……あ、ああ、そうか。そっちは、えーと、23だっけ? 私は30の皐月」
「おばはんのサッキか」
「じゃないのよ! あんた四年後にどっか行く予定でもあんの? ゲロしないと酷いわよ!」
「いや、え? 四年後? あー、いや、今は別にないけど」
「あんた、わざわざ竜太郎さんの事務所やめてまでどっか行ってんの! 重大な用事に決まってんでしょう!」
「あのさ、失踪直前の俺がどっかいるみたいなこと桜姉が言ってたからさ。そっちに聞いた方がいいんじゃないの?」
 言いながら、自分でも考える。一度、27の僕と連絡を取った方がいいな。
「え? いるの? だとしたら5番以降の部屋かしら……」
「つうかさ、お前、前に大学四年間あわなかったじゃんよ。なんで三年で気にしてんの」
「結婚したからに決まってんでしょ! あ、あわわ」
「……は? え、なに?」
「なんでもない!」
 がちゃり。
 僕の惚けている後ろで、竜兄が腹を抱えているのがなんとなくわかった。
「うははは、鯨司と皐月は婚約かぁ。お前、四年後に行方不明になるらしいから今から四年間のいつかだな。おめっとさん。末永く幸せにねーって、どうせすぐいなくなんのか。なんで?」
「知るか!」
「まぁ、そりゃ知るわけはないよな。うん」
 竜兄を無視して、僕は再び電話に手をかけた。そういえば、27の僕は何番の部屋にいるんだっけか。適当に、6番にかけてみる。
 しかし、婚約だって? そんな大事な時期に、どうしてまた僕は姿を眩まさなきゃならないんだ? 桜姉の話じゃ、27の僕はずいぶんと陰気らしいし……。
「もしもし」
「もしもし」
 受話器の向こうの声は、僕の記憶には無かった。相手もそうなのだろうか、しばらく警戒したような無言が続く。
「……」
「……」
 いい加減しびれを切らした当たり、同時に「あの」と言って、また押し黙る。
 もしや。
『こちら、大槻鯨司』
 ハモった。ああ、無駄に息が合うと思ったら相手は自分だった!
「23歳」
「27歳」
 27。四年後、失踪直前の僕。
「どう、元気してる?」
「まあな。そっちはどうだ? やっとこさ竜兄の弟子になったんだろ」
「まだ何も仕事やってないから、わかんね」
「そうか」
「なんか自分と話してるのって妙な気分だ」
「そうだな」
 しばらく、奇妙な近況報告が続く。
「ところでさ」
 一段落したところで、僕は思いきって話題を出した。
「行方不明になるって、ホントのことかい」
「……さあ、知らない」
 嘘だ。自分が嘘をつくときの心境はよくわかっているから、断言できる。
「ホントのことを言ってくれよ」
「……」
 沈黙。
「どこかに行くのか?」
「そんなようなもんだ」
「だって、サッキと婚約したんだろ」
「知ってるのか。今から半年くらい前だ」
「それなのにどうして?」
「簡単だ……俺の意志とは関係なく、失踪するからだろうよ」
「どうして!」
「心当たりは無くもない。でも確信はない」
 受話器の向こうから聞こえる己の声の、なんと頼りないことか。多分、向こうにもそんな風に聞こえているのだろう。
「はっきりわかったら電話する。こっちにいる間にな。部屋、どこだ?」
「5番」
「気をつけろよ」
「え?」
 その言葉を最後に、通話が切れる。
 僕が受話器を持ったまま突っ立っていると、竜兄が何事かとのぞき込んできた。
「おい、どうかしたか」
「え? あ」
「四年後のお前になにか言われたのか」
「気をつけろって」
「気をつけろ……ふん、そうか」
「どういうこと?」
「事件に巻き込まれる可能性があるってことさ」
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