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スパイという職業 ~スパイのためのハンドブック~

 漠然と知りうるスパイの仕事としては「敵性国家(ないし組織)に侵入し、機密レベルの情報を盗み出す」という程度でして、そうでなければ「物理的破壊工作を行い陰謀を食い止める」というようなものです。実際の所、スパイの仕事は前者がほとんどで、ジェームズ・ボンドに代表されるような後者のスパイはほとんどいないそうな(ボンドにはモデルになった人がいるそうですが)
 企業スパイなんかも本質的には同じでしょうが、それではスパイって具体的にはなにをしてるの? と仲間内で話したりしてると、やっぱり映画の話になったりなんかする。もちろん秘密にまみれた仕事なので、そうそう外部に流出はしないもののはずですな。なんにせよ、その仕事に関しては多くが伏せられているのがスパイです。通常は知りようもないし、簡単に知れたら困るはず。

 という考えは古いのか、もしくは「一般人知ったところで干渉できないし、どうせ敵対勢力は知り尽くしてるし構わないんじゃないか」という考えだったのかはわかりませんが、実在したスパイの人が、スパイになるためのノウハウを記した本が



『スパイのためのハンドブック』です。

 ハヤカワノンフィクション文庫は俺的ストライクなテーマの本が多く、買った本を挙げていくと「人類が消えた世界」「悪霊にさいなまれる世界」「神話の力」「つかぬことをうかがいますが…」「図書館ねこデューイ」などなど、タイトル買い人間のワタシ大歓喜! もはやどれも欲しいが予算が足りない、迷う、というレベルのレーベルです。シャレじゃねえよ!
 ノンフィクションと言うだけあって、ノンフィクションであればとりあえずなんでも、というスタンスなのかは知りませんが、科学、歴史、伝記と非常に幅が広いレーベルです。いわゆるオカルトやニセ科学についても言及しているものがあり「なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか」なんかは次に読もうと思ったり。



 
 さて。
 世の中にハウツー本は多々あれど、またスパイに関して書かれた本は多々あれど、「How to be スパイ」となると非常に珍しいのではないかと思われます。そしてまた、多くのハウツー本がテーマとなる職業について具体的な仕事の数々を紹介しているように、この「スパイのためのハンドブック」もまた、スパイが行う諜報活動をある程度まで明かしてあります。それどころか「どうすればスパイになれるのか」「スパイとしての適正が読者に備わっているのか」といった事まで言及してあります。

 これがどのあたりまで信用できるかについては、その他のハウツー本がどれだけ信じられるか(どれだけその職業の真実を教えているか)で比べるのもよいでしょうし「もし本当に核心まで書いているのであれば情報部が出版を許すはずがない! これは実際の仕事から我々の興味をそらすための罠だ!」という陰謀論的観点から読んでみるのも面白いです。

 なにせ作者ウォルフガング・ロッツは、まえがきによると引退後(?)メディアに多々名前が露出したほど有名なスパイであるとのことで(ワタクシの貴重な情報源であるWikipediaにも記事がある)、「専門家なにがし」「元スパイなにがし」というどこぞの馬の骨とはワケが違う。正真正銘の元スパイが実際の体験談を交えながらスパイの講釈を行うのですから、内容の「それらしさ」といったらありません。微に入り細に入り丁寧に書かれてあります。

 まず前書きが終わった後の第一章が「あなたのスパイ能力をテストする」ですから、なんか「スパイっぽい!」という気持ちが溢れかえるのが理解していただけると思います。実際に行われるのはマークチェック式ペーパーテストですが、採点を行い、どれほどスパイに向いているかというのがわかるようになっています。その後は問いの意図を一つ一つ解説していくのですが、このときに明かされる「スパイに必要な要素」というものが、ある程度予想がついていたり、または解説されて「なるほど」と思うものもあったりで、おそらく誰が読んでもどこかに意外な箇所があると思います。「この答えがスパイっぽいかな」と考えて選んだものが低得点だったり。

 その後はスパイが実際に携わる仕事の紹介が始まりますが、まずなんといっても気になるのは第二章の「スパイはどこからやってくるか?」でしょう! スパイ組織、すなわち秘密情報部(または諜報部)に就職するための手順が書かれてあるのです! ワクワクが止まりませんね!
 実のところ、ここで紹介されている就職活動は十分にスパイっぽく、通常の就活とはまったく異なります。己の才覚を駆使し、運を味方につけなければ面接も叶わぬ職業がスパイなのです。詳細は本文で。
 ちなみに作者のロッツ氏は軍部所属で、その縁だとのことです。

 この本の丁寧なところは、行うべき手順を箇条書きにしている所ではないでしょうか。箇条書きがこれほどわかりやすく、また楽しいものであると思えたのは、この本が初めてのような気がします。一つ一つの項目は単純ながら、そこに含まれる思わぬ注意点、なぜそういった動きが必要なのかといったフォローも含め、例えば他人になりすます方法については七つの手順で説明がなされています。
 ここがまたうまい点で、作者は「今から始められるスパイの特訓」みたいな、近所でやってみましょう的な練習方法を紹介しています。上記の「他人になりすます」方法については、当面の目標を「まったく知らない人と(設定した職業に関しての)仕事の契約を約束する」段階までもっていくこととしています(実際には契約せず、次に会ったときと約束してブッチする)。
 その他にも他人をストーキングしてみるといった法に触れそうな危ない(しかしココロオドル)尾行方法、情報の入手の仕方などが懇切丁寧に書かれてあり、むしろこれスパイというより犯罪幇助的にどうなの、みたいな冗談じみた感想が浮かんでくる始末。まあスパイには時として犯罪をおかす勇気が必要と作者も言っていますが。また尾行の方法については気取られそうになったらさっさと諦めて違う人にターゲットを変更しなさい、とも書かれてあるのでセーフでしょうか。

 ボンドガールに代表される「異性問題」についても深く取り上げています。ロッツ氏はスパイ活動の真っ最中に結婚したという例外中の例外だそうですが、一般的なスパイがどれだけ異性に悩んでいるか、またハニートラップに神経質になっているかを教えてくれます。ハニートラップへの対処方法なんかも書かれてたりするので、企業で社外秘の情報を扱っている人は是非どうぞ!

 そのほか、スパイの給料や経費の落とし方、逮捕されたときの処方、また余生の過ごし方など、普通のハウツー本でも触れられない(笑)箇所まで、まさにゆりかごから墓場までといった勢いです。彼は相当の大スパイだったららしく、所々で自慢話が頻出しますが(そのくらいでないと箔がつかないのも事実)昔話は大抵が面白く、そして主に具体的なスパイの仕事についてはこの昔話のなかに登場します。昔話によって仕事の紹介を、そしてそれらの訓練方法を、といった作りですね。実際のところ、翻訳のせいでしょうが会話が非常にウィットに富んでいたり(原文もこんなニュアンスなんでしょうか)といった部分で創作性を懸念しますが、そのあたりは小さな問題、と言い切ってしまえるほどにエンターテインメントな本です。

 それにウォルフガング・ロッツは本文内で「スパイの人生の大部分はウソで作られている」と言っております。もちろん大スパイであったロッツ氏は天才的な嘘つきだったはずで、テクニックの一つとして「大きなウソに小さな真実を」を紹介しております。すなわちこの本で真実の部分はほんの少しで、全てがウソである「可能性がある」と宣言されているに等しい。これが真実か、それとも大スパイの余興で書かれたフィクションなのか、本当の所を調べてみるのも楽しそうです。それこそスパイになったつもりで!


 追伸:日本での初版が1982年と、とても古い本であることを知りました。ウォルフガング・ロッツもすでに他界されており、今の情報時代にはそぐわぬ部分があるかも知れません。ネット関連にはまったく触れられておらず、もしこの人がスパイ活動においてネットに言及していたらどうなっていたかと考えると、やはり胸が躍りますね。

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