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東京雄飛ヶ丘ボヘミアン1「第一次接近遭遇」b

 雄作がケーキを食べようとタバコを潰していると、男は何を思ったのか反対側の椅子にドッカリ座り込んだ。 予想だにしなかった雄作は、フォークをつかむ寸前、体の動きを止めてしまう。
「未成年だろ? タバコは感心しないなぁ」
 言いながら、胸ポケットからキングズ・ショットを取り出して火をつけた。
「……飲食店の営業中に店員が吸うのもどうかと思いますよ」
「ぶはははは、やるなお前」
「客の話相手も仕事の内ですか」
「趣味」
 趣味?
 意図をはかりかねる。
「食えよ。既製品だけど」
 ちらり、と厨房のほうに意識を向ければ、聞こえてくるのはどうやら皿洗いの音。こりゃ助けは期待できないな、と、雄作は諦めた。一切れ、口の中に放り込む。
 疲れた体に甘いものは染みる。クリームの甘さに感涙し、今までの数十分がいかに愚かで意味のないものであったかを思うと、別の意味でも泣けてくる。まあ、とにかく、このチョコレートケーキはうまい。
「この辺に住むってことは、アレか。大成大か」
「ええ、まぁ……毎日この坂を上り下りするのもなんですけど」
「毎日大学にいくヤツなんていねーよ……なあ、もしかしてサクラサク寮か?」
 どきり。
 一瞬、雄作の手が止まる。それを見ると、男の顔が意地の悪そうな笑みに染まっていった。
「ああ、ああ、なるほど。京子ちゃんが言ってた入寮生ってお前のことか」
 言葉もなく男を見つめる雄作。一体全体、どういう根拠があって男は彼の入る寮をあてたのだろう。あてずっぽうにしても、この付近は大成大の学生が多く住むところだそうだし、もっと有名な量はあるはずだ。たとえば光明寮は、安い、大きい、広いと全国でも屈指の学生寮であり、希望する学生も多い。
「いやあ、俺って見る目あるなあ。だってお前、あそこの寮生とすげぇ似てるんだもんよ。空気が」
「似てるって、まさか、それだけの理由で?」
「それにあそこの連中は、俺の好きなタイプだからな」
 ドン引きである。話の流れからすると、雄作自身も男の好きなタイプに当てはまることになる。いくら美系の色男から言われたとしても全然うれしくない。
「ちょうどいいじゃねぇか。もうすぐそこの一人がバイトで来るから話聞いていけよ。どうせ今の時間、忙しくはならないから」
「いえ、あの、手続きの時間とかあるんで」
「構やしねーよ。あそこの管理人、俺の知り合い。電話して言っといてやるよ」
 果てしなくおせっかい焼きの男は喜々として携帯電話を取り出すと、すぐさまコールをかける。店員失格というか、うざいというか、こんなキテレツな人間に出会ったのは初めてだった。どれほど驚いているかというと、先ほどからケーキをフォークにさしっぱなしのまま、微動だにできないほどである。
「もしもし、キミさん? オレオレ、この前はアリガトね。うん、今度お礼にごちそうするから店にきなよ。桜も喜ぶよ。うん、そうそう。それで、今日入寮するヤツいるでしょ。今店にいんのよ。え? うん、えーと」ここで男は雄作に向き直ると、「名前なんだっけ」
「高池雄作」
「コーチ? 珍しい名字だな、まあいいや。ええと、コーチユーサク。そうそう、京子ちゃん、もうすぐ来るから、ほら、いろいろ知るべきこととかあるだろ? 入寮にあたって。そういうの教えてから行かせるから、ちょっと予定より遅くなるかもしれないけど心配しなくていいよ。うん。じゃ」
 ピッ。
「というわけで」
「強引ですね」
「気にするな少年コーチ。御剣竜太郎だ、よろしく」
「よろしく。なんか電話で妙なこと言ってましたよね」
「あん?」
「いろいろ知るべきこと、とか。普通は管理人さんから聞くもんでしょ」
「いやあ、知らないってのはいいことだよなぁ」
「どういう意味です?」
「管理人は管理人という立場上、未成年に対して言えないことなどもあるわけだよ、少年。まあ、そういうのは京子ちゃんに聞きな。あと十分くらいで来るから」
 竜太郎は椅子から立ち上がる。気がつくと、三時も四分の三を過ぎている。
「暇だったら雑誌でもテレビでも見ててくれ」
 と言って奥に向かって歩いて行く。厨房から、買ってきたもの出しっぱなしじゃないの、なにやってんの、いや俺はこの町のお兄さんとして未来ある若者に助言をどうのこうの、そういうのはやることやってからにして頂戴、といった掛け合いが聞こえてきた。
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